割れ窓理論とは?意外と活用されている理論の解説と3つの活用事例

自己啓発

「友人の家に遊びに行ったら、靴が散らかっていたので、自分も靴をそろえなかった」

このような経験はないでしょうか?

この時、私たちの頭の中で働いている心理は、「割れ窓理論」という、環境犯罪心理が働いています。

この割れ窓理論ですが、実際に多くの企業でも活用され、成果を上げているのですが、ビジネスや教育など、いろいろな場面で応用できます。

私たちもその理論や具体例を知り、さらに応用できるように、理解を深めていきましょう。

割れ窓理論とは?

割れ窓理論というのは、別名ブロークンウインドウ理論といい、小さな不正を徹底的に正すことで、大きな不正を防ぐことができる、という環境犯罪学の理論です。

具体的に、下のような心理を利用して、犯罪や風紀の乱れを早い段階で抑止できる、という理論です。

建物の窓が壊れているのに、直さずにそのままの状態で放置しておく。

そうすると、それがだれも壊れていることに注意を払っていないという象徴になる。

やがて、他の窓もまもなくすべて壊されてしまう。

この理論は、アメリカの犯罪学者である、ジョージ・ケリングによって発案され、この理論を検証するために、オランダの研究チームによって、「落書き」を使った実験が行われました。

落書きが一切されていない壁と、落書きがある壁を用意し、そこに訪れた人の自転車にゴミとなる広告を設置して、その後の状況を観察しました。

その結果、落書きがされている壁の近くでは、ゴミのポイ捨てが多くなったことが観察されたそうです。

このことから、一つの無秩序がほかの無秩序まで招いてしまうことを証明しました。

しかし、このことは逆に、最初の小さな無秩序を厳しく取り締まることで、そこから誘発されるであろう大きな無秩序を未然に防ぐことができる、ということが考えられます。

この割れ窓理論は、犯罪を取り締まるだけでなく、私たちの身の回りの多くの場面で応用されています。

割れ窓理論を応用している代表的な例を知り、理解を深めながら、自分なりに応用できるようになれるといいかと思います。

割れ窓理論の代表例

実は、この割れ窓理論は、アップルの創業者である、スティーブ・ジョブズも活用していたといわれます。しばらくアップルを離れていた彼が、職場に戻ってきたとき、優秀な人材が多くいたものの、まるで一体感がなかったといいます。

そこで、ジョブズは、まず乱れた社内環境を見直すべく、社内に規定を作り、小さなことから徹底的に指導したといいます。

そのおかげで、社内の雰囲気が一気によくなり、そのおかげで今のアップルがあるといわれています。

このように、何か大きな偉業の陰には、割れ窓理論の成果があります。

その具体的な事例を紹介しましょう。

ニューヨーク市での治安回復

1980年代から1990年代へかけて、ニューヨーク市は、毎年約2000件ほどの殺人事件が起きていたと言われています。

1994年にニューヨーク市長に当選したドルフ・ジュリアーニ市が、どんな小さな犯罪も徹底的に取り締まりました。「ゼロ・トレランス政策」と言われたこの政策では、落書き、未成年喫煙、万引きなど、すべての軽犯罪を割れ窓理論的に排除していきました。

この政策のおかげで、5年間で殺人発生件数は67.5%減少したといわれています。

ディズニーでの環境美化

日本最大級の遊園地である、東京ディズニーランドでも割れ窓理論は適用されています。

小さなごみや、施設内の些細な汚れや傷をも、夜間の内に清掃修繕します。

これにより、従業員間の清掃に対する意識づけを行っているといわれます。

また、お客様にも、「こんなに綺麗な場所なのだから、汚したらダメなのではないか」という心理が芽生えるようです。

このような心理から、遊園地内の美化意識にも割れ窓理論は応用されています。

割れ窓理論の応用

割れ窓理論は、小さな不正や犯罪を取り締まることから、重大な過ちをなくすことができるという考え方です。

重大な犯罪を取り締まることは、とても多くの時間と労力がかかります。

しかし、小さなことを正すことであれば、一般人でも、お互いに注意しあうことなどで、なくすことができます。

このことから、この割れ窓理論は、日常の様々な場面に応用することが可能になります。

町の治安維持だけではなく、ビジネスにおいても、また学校や介護施設でのいじめ防止にも大いに役立ちますので、その一部を紹介しましょう。

このことを知ることで、自分の周りのことでも、応用して活用していただけたらとおもいます。

ビジネス編

先ほど紹介した、スティーブ・ジョブズの例でもそうですが、割れ窓理論は、ビジネスの場面においても、活用することができます。

例えば、社内の雰囲気が悪かったり、業績が悪かったりしたとき、何か小さなルール違反がいたるところで起きてないでしょうか?

少しくらいの遅刻は良しとされていたり、社内にゴミが落ちていたり、デスクの上が片付いていなかったりと、本当に小さなことかもしれませんが、そのようなことを、少しずつでもコツコツと注意したり、お互い指摘しあったりすることで、やがて大きなミスが防げたり、社内の雰囲気が良くなったりするものです。

教育編

割れ窓理論は、学校のいじめ問題にも適用できます。

いじめは、生徒自身の尊厳を破壊するだけでなく、最悪の場合自殺にまで追い込んでしまいます。

生徒のちょっとした意地悪程度の行動でも、させないように徹底的に注意します。

このように、モラルの低下を常識化させない教育現場を作ることができれば、いじめの件数も減っていくでしょう。

介護編

最後に、よく割れ窓理論の活用の場として挙げられているのが、割れ窓理論に介護の現場です。

介護の現場において、割れた窓とは、「言葉」であると、言われています。

介護現場でのいじめとは、利用者に対して使う言葉の暴力です。

利用者に対して、乱れた言葉遣いを少しずつすることにより、次第に常識化していきます。

それがエスカレートし、歪んだ常識がさらにエスカレートし、最後に取り返しのつかない事態を招いてしまいかねません。

普段から、利用者に対しての丁寧な言葉かけを徹底することで、しっかりとした利用者と介護者の関係を保つことにもつながります。

その他の応用

その他も、いろいろな場面で活用されている割れ窓理論ですが、最後にもう一つ紹介します。

小学校や公園に行くと、花壇がきれいに整備されているところがないでしょうか?

これを割れ窓理論的に考えてみましょう。

花壇が汚いと、「この学校や公園は、警備が甘いのでは?」という疑問が生まれ、「この学校や公園では、少しくらい悪いことをしても問題ない」と考える人が出てくるでしょう。

それを逆に利用して、花壇を綺麗に整備しておけば、犯罪者は寄り付きにくくなり、結果、犯罪も少なくなるでしょう。

割れ窓理論と似た考え方

最後に、割れ窓理論に似た考えを紹介します。

その一つが、「ハインリッヒの法則」です。

これは、「1件の重大な事故や災害の裏には、29件の小さな事故や災害があり、その裏には、300件のヒヤリハットがある。」というものです。

職場の安全性の点検整備、適切な労働者の採用、そして、採用や研修を施すことで、不安全な行動と、不安全な状態を排除できるという主張です。

もう一つは、「腐ったみかんの方程式」です。

「箱の中に1つでも腐ったみかんがあると、他のみかんまで腐ってしまう。腐ったみかんは箱の外へ出しておくのが一番」というものです。

これも、小さな1つの負の偉業は、周りに伝染して、やがて大きな結果として降りかかってくる、ということで、間違ってはいない考え方です。

まとめ

割れ窓理論は、先ほど紹介した、ビジネス、教育、介護の分野にとどまらず、日常のいたるところに、取り入れることができる考え方です。

よく言われる、「服装の乱れは、心の乱れ」という考えも、割れ窓理論的な考え方ですね。

小さなことを疎かにしていると、それに慣れていき、大きな乱れへと繋がっていきます。

そのことを踏まえて、人生が、日常が良い方向に進むように、この割れ窓理論をうまく日常に取り入れてみてはいかがでしょうか?

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