賃貸不動産経営管理士の必要性と内容とは

不動産関係の資格として注目を浴びているものに、賃貸不動産経営管理士があります。

日本の住宅市場として賃貸物件が、住宅全体の4割ほどの大きなシェアを占めています。

日本の住宅市場の中で無視できない重要な位置付けにありながら、賃貸物件は家賃滞納や入退去時のトラブルが頻発しており、問題解決を行って経営健全化を図ることが急務となってきています。

このような背景にあることから賃貸不動産経営管理士の重要性が高まっており、資格試験の受験者は年々増加の一途を辿っています。

これから不動産関係の仕事を行っていくにあたって、賃貸不動産経営管理士の基本的な事項を把握しておきたいという人から、資格を取りたいので資格制度や仕事内容を詳しく知りたいと思っている人まで、皆さんが完全に理解できるようにお伝えします。

賃貸不動産経営管理士とは

賃貸不動産経営管理士は、アパートやマンションなどの賃貸不動産を管理する専門家のことです。

賃貸不動産に関する専門的な知識・技能のみならず倫理観も必要とされています。

賃貸不動産経営管理士となるためには、毎年11月中旬に実施される資格試験に合格して登録手続きを行う必要があります。

不動産関係の資格として、不動産全般を取り扱う宅地建物取引士(略称:宅建)が最も人気がある資格ですが、賃貸不動産業は時代が進むにつれて重要性と困難性を高めており、宅地建物取引士の範疇を超えた高度な知識を要求されることが、多くなってきています。

そこで、賃貸不動産業の専門家になることを考えている人や、宅地建物取引士の資格を持っていて仕事の幅を広げたい人が賃貸不動産経営管理士の資格取得を目指すケースが増えてきています。

不景気な世の中を反映してか、宅地建物取引士をはじめとする不動産関係の資格の受験者は、前年から減少または横ばいといったものがほとんどの中において、
賃貸不動産経営管理士の受験者は年々増加しており、2015年は前年から約17%(2014年4188名 → 2015年4908名)も増加しています。

資格が整備されてきた背景

賃貸不動産経営管理士が創設される以前において、賃貸不動産業の資格は、下記の4つ業界団体ごとに独自に運営されていました。

・(社)全国宅地建物取引業協会連合会
・(社)全日本不動産協会
・(財)日本賃貸住宅管理協会
・(社)日本住宅建設産業協会

そのような状況の中で、賃貸不動産管理の資格を業界統一資格とするため、2007年に「賃貸不動産経営管理士協議会」が設立され、「賃貸不動産経営管理士制度」を創設することになります。

4つの団体がそれぞれの利害を超えて業界統一化を図ったのは、賃貸不動産業の重要性と困難性が高くなってきており、できるだけ早く整備する必要があったといわれています。

また、この流れと同調する動きとして、2011年12月から国土交通省が「賃貸住宅管理業者登録制度」を開始しました。

この制度は登録された賃貸住宅管理業者が、定められたルールに基づいて適正な賃貸住宅管理業務を行うことが、義務付けられるというものです。

任意の制度ではありますが、顧客が適正な管理業務を行っている賃貸住宅・管理業者を選択することが可能となるため、賃貸住宅の管理に関する共通ルールが普及することや、賃貸住宅に関するトラブルが減少することが期待されています。

賃貸不動産経営管理士は民間資格ですが、このように重要性が高まっている状況を踏まえて、賃貸不動産経営管理士協議会は賃貸不動産経営管理士を国家資格とすることを目指しているようです。

資格を完璧に掌握

賃貸不動産経営管理士の資格試験は、賃貸不動産経営管理士協議会によって運営されており、毎年1回(11月中旬)札幌、仙台、東京、横浜、金沢、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、沖縄で実施されています。

尚、受験料は12,000円(税別)であり、合否発表は1月中旬です。受験資格は不要であり誰でも受験できます。

試験の内容は下記のとおりです。

出題方式マークシート方式:40問(4択)
出題内容①賃貸管理の意義・役割をめぐる社会状況に関する事項
②賃貸不動産経営管理士のあり方に関する事項
③賃貸住宅管理業者登録制度に関する事項
④管理業務の受託に関する事項
⑤借主の募集に関する事項
⑥賃貸借契約に関する事項
⑦管理実務に関する事項
⑧建物・設備の知識に関する事項
⑨賃貸業への支援業務に関する事項(企画提案、不動産証券化、税金、保険等)
試験時間60分
合格ライン競争試験であるため、受験者全体の一定割合を合格としています。今までの傾向をみていると、70%以上の正解であれば合格ラインを突破するようです。

もともと賃貸不動産経営管理士の資格試験は、短期間で合格することが十分可能な易しい試験であり、合格率も高いといわれていました。

しかし、合格率は

2013年:85.8%
2014年:76.9%
2015年:54.6%

と年々低下して難しくなってきているようです。

また、国家資格になることも検討されており、いずれは合格率が20%ぐらいになるのではともいわれています。

現在はまだ比較的合格しやすい状況にあるため、今のうちに受験しておこうとする人も増えています。

また、賃貸不動産経営管理士講習が、毎年1回(2日間:2015年は5/13~9/4)札幌、仙台、東京、横浜、金沢、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、沖縄(注1)で実施されています。

尚、受講料は16,500円(税別)であり、他にテキスト代3,980円も必要になってきます。

2日間の講習の内容は下記のとおりです。

講習内容講習時間
1日目賃貸管理総論60分
賃貸住宅管理業者登録制度30分
管理業務の受託・借主の募集90分
建物管理の実務60分
賃貸借契約の管理60分
賃貸業への経営管理支援業務(総論、各論、証券化業務、保険)50分
2日目賃貸借契約に関する知識160分
賃貸借契約に関する知識260分
建築法規、建物・設備の知識90分
建物・設備の保全・維持管理70分
賃貸業への経営管理支援業務(税金)70分

2日間全ての講習を受けると修了証が授与されます。修了証は発行後2年間有効となります。

賃貸不動産経営管理士講習の修了者が、賃貸不動産経営管理士を受験する場合、出題数40問のうち4問が免除されます。

賃貸不動産経営管理士の資格試験に合格した後、資格の登録を行う際に下記の登録要件を満たす必要があります。

(登録要件)
・宅地建物取引士(注2)、または協議会が認める賃貸不動産関連業務(注3)に2年以上従事しているか、従事していた者。

尚、登録料は6,000円(税別)であり、有効期限は5年間になります。

※注1:開催される年によって実施される地域が変更される場合があります。
※注2:登録手続き時に宅地建物取引士証の交付を受けている必要があります。
※注3:協議会が認める賃貸不動産関連業務に従事している者とは、宅地建物取引業、不動産管理業、不動産賃貸業及び協議会構成団体の会員とその従事者のほか、協議会が認める者を示しています。

また、協議会構成団体とは、(財)日本賃貸住宅管理協会、(社)全国宅地建物取引業協会連合会、(社)全日本不動産協会の3団体のことです。

活躍の場や将来性を探る

賃貸不動産経営管理士の活躍の場は

・不動産会社への勤務
・賃貸不動産の経営

などがあります。

不動産会社に勤務する場合は、大企業か中小企業によっても異なってきますし、勤続年数などによっても変わってきますが、平均年収は約300万円~600万円といわれています。

不動産関係の資格を有することによって、会社内でのキャリアーアップを図っている人が多いですが、賃貸不動産業務を行っている不動産会社では賃貸不動産経営管理士の資格取得を奨励されるケースが増えています。

賃貸不動産経営管理士の重要性が高まっている一方で、実際に実務を行う賃貸不動産経営管理士の数は不足しています。

その理由として、賃貸不動産経営管理士の登録要件に宅地建物取引士、または賃貸不動産関連業務に2年以上従事しているとの条件があり、出入りが激しい業界ということもあって条件に見合った人員の確保は難しいようです。

また、賃貸不動産経営管理士の資格試験は年々難しくなっており、いずれは国家資格になることも検討されています。

このような状況を踏まえると、賃貸不動産経営管理士として不動産会社に勤務することは、将来的に活躍の機会が増えていくことが予想されます。

賃貸不動産の経営は時代が進むにつれて厳しさを増しており、そのような状況にある中で賃貸不動産経営管理士の資格を取得する経営者が増えてきています。

特に賃貸不動産経営の経験年数が少ない経営者にとって、賃貸不動産経営管理士の資格を取得することは、賃貸不動産経営管理を体系的に学び知識を習得する機会であり、

経営者自らが賃貸不動産経営管理を行う場合にも活かせますし、管理業者を使う場合でもその働きをチェックする目を養うことに繋がります。

また、賃貸不動産の経営が厳しさを増している一方で、賃貸不動産の需要は将来的に伸びていくとのデータもあります。

日本の人口は2005年以降に減少していく中で、離婚率や未婚率が年々上昇しており、賃貸住宅を利用している世帯数は増加しています。

もちろん、賃貸不動産の経営が厳しさを増しているのも事実ですが、可能性を感じてアパート経営を手広く行っている経営者も少なくありません。

可能性と厳しさの両方を備えているからこそ経営者自らが賃貸不動産経営管理のレベルアップを図る必要性が高まっています。

現状はまだ資格を取りやすい状況にあるので、今のうちに賃貸不動産経営管理士の資格を取得されることをおススメします。

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