「アジャスター」という職業名を聞いて、ぴんとこない人も多いかもしれません。
しかし、「保険事故を調査して、保険金支払い金額を確定する専門職」と聞けば、多くの人がお世話になったことを思い出すのではないでしょうか。
日常生活や企業活動における様々なリスクをカバーする、新しい保険が次々生まれている今、「アジャスター」の活躍の場はますます広がることが期待されます。
他の業界に比較して年収も高い、注目の職業「アジャスター」の仕事について、まとめてみました。
アジャスターの種類
「アジャスター」と呼ばれる職業には、大きく分けて、次の二つがあります。
・技術アジャスター
・一般アジャスター
それぞれ簡単に説明してみましょう。
技術アジャスターの仕事内容
一般に「アジャスター」というと、「技術アジャスター」を指します。
技術アジャスターは「一般社団法人日本損害保険協会」の資格試験に合格し、当協会に登録された者のことで、「保険事故」における自動車の損傷状態を確認し、事故原因を調査し、適正な保険金の支払金額を確定するのが仕事です。
一般アジャスターの仕事内容
技術アジャスター以外に、「社内資格」として、「一般アジャスター」を設けている生命保険・損害保険会社も多いです。
「一般アジャスター」は医療確認、自動車以外の事故原因確認、災害時における建物の損害確認などを行う専門職です。
医療確認を行うアジャスターを、特に「医療アジャスター」という専門職にしている会社もあります。
アジャスターの仕事を詳しく
技術アジャスター
大手の調査会社では、様々な専門性を作ったチームをつくり、それぞれの専門分野に特化して技術アジャスターたちを活躍させているところもありますが、一般的に、技術アジャスターの仕事は以下のようなものです。
- 整合性の調査・確認
事故に遭われたお客様(保険契約者)から、事故の内容を詳しく聴きます。
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修理工場に出向き、修理が始まる前に、実際の事故車両の損傷部位を確認します。2台の車両の衝突事故であれば、2台とも調べます。
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事故現場に出向き、道路状況などを詳しく調べます。
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車両の損傷状態や道路のスリップ痕などから、正確な事故状況・事故原因を調査して、修理業者とも話し合いながら、お客様のお話との整合性を確認します。
事故原因によって、被害者と加害者の事故費用負担割合が違うので、幅広い知識、慎重な調査、冷静な判断力が必要です。
- 車両損害額の調査
事故により損傷した車両に対し、修理にとりかかる前に業者と話し合いながら、的確な損傷診断をし、効率的な修理法を考え、その修理法と必要部品から適正な修理費を算出して見積書を作成し損害額を確定します。
あるいは、業者から送られた修理見積内容が適正かどうかを判断します。
- 示談交渉
修理金額が決まると、調査結果をもとに「損害額」「過失割合」などを判断します。
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お客様に修理方法・期間・金額を提示します。
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弁護士の補佐をする「物損事故調査員」として、お客様、事故の相手方、相手方の保険会社の担当者など、関係者との示談交渉を行い、損害額の確定を行うこともあります。
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示談が成立せず裁判に至った場合、裁判所に報告書や意見を提出することもあります。
一般アジャスター
➀医療確認
医療アジャスター、メディカル・インスペクターという専門職をおいている会社もあります。
- 治療内容・治療費の妥当性についての調査
主治医などの医療関係者と受傷者から、怪我の症状、治療法を確認し、事故と怪我の因果関係や怪我の程度と治療内容の妥当性を調査し、適正な保険金の支払いに必要な情報を収集します。
医療機関等と医療費の折衝を行うこともあります。
- 治療期間の妥当性についての調査
長期にわたり入院している受傷者の入院期間の妥当性、長期にわたり治療が続く受傷者の治療終了時期や後遺症の可能性の調査を行います。
- 障害を負ったお客様へのサポート
事故で重度の障害を負ったお客様に対して、各種社会保障制度についてアドバイスし、社会復帰するためのサポートも行います。
②自動車事故以外の事故の原因確認
製造業、建築業、流通業、小売業、医療及び介護事業など、様々な事業活動における事故発生現場へ出向き、事故状況の確認や事故原因の特定を行い、責任割合を判断し、支払保険金額を確定します。
事故の再発を防止する提案もします。
③自動車以外の財産・財物の損害確認
火災・台風・地震などによって損壊した建物など保険対象物の損害状況を確認します。
建築関係の専門知識が求められるため、建築士からの転職もあります。
1日でも早く、被災者であるお客様に安心を届けるために、大切な責任ある仕事です。
気になる待遇を詳しく
技術アジャスターは、勤続年数と資格のランクによって異なりますが、2級をとって第一線で活躍できるようになると、年収800~1,000万円と言われています。
ある大手損保会社の募集要項には技術も一般も同じく、
年収例:3年目 500万、10年目 820万 と記載されています。
技術も一般も、損保会社・調査会社の福利厚生・給与体系に準じ、他の業界と比較して待遇が良いことは間違いなさそうです。
ただし、全国転勤は覚悟しておいた方がよさそうです。
アジャスターに求められるもの
技術アジャスター
- 幅広い知識
車両の構造、機能(応募時に自動車整備士の資格を求める会社もあります)
事故解析(どのような力でどれくらいの損傷を受けるか、など)に必要な理学・工学
修理技術
修理見積技術(どこを、どの修理方法で、いくらで修理するか)
法律(交通法令・損害賠償に関する民法など)
保険(保険約款など)
- 高いコミュニケーション能力
各方面への聞き取り・説明・交渉が日常の仕事です。
相手の立場を考えながら、主張すべきことは主張する、高いコミュニケーション能力と熱意が必要です。
- 文章力
会社、ときには裁判所に提出する報告書を書く必要があります。
- 正義感
保険金の不正・不当請求には毅然として応じず、本当に困っているお客様のお役に立つ信念が必要です。
- 客観的な視点
加害者・被害者、双方に客観的で公平な視点を持ちます。
- 忍耐強さ
簡単には事故原因がわからないケース、被害者への対応が難しいケース、長期にわたって交渉が続くケースもありますので、困難な事案もやり遂げる忍耐強さが必要です。
- 強い向上心
自動車は日々進化しているため、自動車の車体や修理技術に関する知識をどんどん更新しなくてはなりません。強い向上心を持って、日々学習し続けることが肝心です。
一般アジャスター
- それぞれの専門分野に関する幅広い知識
- 高いコミュニケーション能力
保険加入者、被害者、担当医など関係者に、必要な情報を気持ちよく話していただけるよう、高いコミュニケーション能力が必要です。
- 誠実かつ真摯な対応
契約上の制約から、困っている方のご希望に応じられない場合もあります。
そのような場合でも、できる限りお客様のお気持ちにそう、誠実かつ真摯な対応が求められます。
その他、技術アジャスターに求められることと、ほぼ同様です。
アジャスターは専門性が高く、年収も高く、お客様に安心をお届けするやりがいのある仕事ですが、相手によってはたいへん難しい対応を迫られる場合もあり、強い精神力が必要な仕事です。
怒鳴られたり、理不尽なことを言われたりすることも少なくありません。
逆に報酬などにつられて保険会社側に立ちすぎてしまい公平な判断ができなくなっているアジャスターも多いと聞きます。
保険会社にもお客様にも公平でありありのままを判断できるアジャスターが最高の仕事人だと思われます。
仕事と割り切って、すぐ気持ちを切り替え、冷静さを保つことが、この仕事を長く続けるポイントです。
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