「損害保険登録鑑定人」の仕事・資格・就職先を詳しく解説

資格

この世に損害保険がある限り、そして、事故や災害がある限り、目立たないけど毎日どこかで活躍している「損害保険登録鑑定人」、安定度の高い資格です。

鑑定人は、保険会社から委託を受けて、保険の対象である財物(建物・家財等)の保険価額(時価額)の評価、火災や地震が発生した場合の損害額の算定、事故状況・原因の調査ならびにそれらに関連する一連の業務を行います。

また、一般社団法人 日本損害保険協会(以下「損保協会」という。)が実施する損害保険登録鑑定人試験(以下「鑑定人試験」という。)に合格し、登録された方を損害保険登録鑑定人(以下「登録鑑定人」という。)といいます。

【引用元:一般社団法人 日本損害保険協会

損害保険が多用化し、ますますその活躍が期待されている「損害鑑定人」。

実は、飛行機や船舶、車、人以外はなんでも扱う凄腕仕事人なのです。「知的好奇心」を満足させながら「手堅く稼ぎ」たいと考えるあなたのために、注目の職業「損害鑑定人」についてまとめてみました。

「損害保険登録鑑定人」の仕事早わかり

鑑定人は、保険会社から委嘱された現場で調査します。

保険契約者や保険未加入者からの依頼に対応することはありません。

というと保険会社側の人間と思われがちですが、その立場は中立で、常に公正かつ的確な調査と判断で、困っている契約者に対し、迅速かつ適正な保険料支払いができるようサポートするのが使命です。

損害鑑定

・事故
火災、爆発、水もれ、盗難、自動車事故や特殊技術(建設・土木・機械等)の事故など、多種多様の保険事故により、財物の焼損、破損、汚損等の損害が発生した場合、保険会社の要請により、調査鑑定、財物の損害額の算定を適正に行います。

・自然災害
台風、地震等の広域自然災害において、保険会社の要請により、被害を受けた財物の調査鑑定、損害額の算定を適正に行います。

評価鑑定

保険会社が保険契約を行う際に事前に保険対象物の鑑定を行い、適正な保険金額を算定します。

製造工場や各種ビル・ホテル、医療施設、プラント、設備・機械、寺社仏閣など、幅広い物件を扱います。

事故原因の調査

調査対象の事故が保険対応できるもの(有責)であるか、保険対応できないもの(無責)か、確認のため原因を調査します。

資格試験の概要

損害鑑定人には1・2・3級のランクがあり、一般社団法人 日本損害保険協会(以下、損保協会)が実施する鑑定人試験に合格し、登録されることが必要です。

厳密に言えば、資格がなくても鑑定業務を行うことができますが、実際にはほとんどの損害鑑定人は有資格者です。

資格取得は必ず3級⇒2級⇒1級とランクアップしなければならず、飛び級はできません。

1級および2級鑑定人試験については単位制をとっており、過去に合格した科目は、次回以降の鑑定人試験においても有効です。

級によって、同じ仕事をしてももらえる鑑定料が変わってしまいますので、この仕事をやるからには、ぜひ、1級を目指しましょう。

また鑑定人ランクとは別に、鑑定業務を行うにあたり有用な公的資格を取得していれば、専門鑑定人にも登録することができます。

「損害保険登録鑑定人」3級

受験資格特になし
実施時期年に2回 1月下旬と7月下旬
試験科目保険・一般常識、電気・機械、建築

※一級・二級建築士の有資格者は、「建築」免除

合格点3教科とも100点満点で60点以上

※一度に3教科とも60点以上とらなければ合格にならず、不合格になると、60点以上とった科目も次回再受験になります。

合格率20~30%

「損害保険登録鑑定人」2級

受験資格3級鑑定人に登録されていること
実施時期年に1回 7月下旬
試験科目保険・一般常識、建築、電気、機械、簿記会計

※一級・二級建築士は、「建築」免除
※公認会計士・税理士・日本商工会議所簿記検定1級合格者は「簿記会計」免除
※第一種・第二種・第三種電気主任技術者は、「電気」免除

合格点5教科とも100点満点で70点以上

※各科目単位制をとっており、1度合格点をとれば、次回以降受験する必要はありません。

合格率10~20%

「損害保険登録鑑定人」1級

受験資格2級鑑定人に登録されていること
実施時期年に1回 1月下旬
試験科目保険・一般常識、建築、電気、機械、簿記会計、研究レポート

※一級建築士は、「建築」免除
※公認会計士・税理士・日本商工会議所簿記検定1級合格者は、「簿記会計」免除
※第一種電気主任技術者は、「電気」免除

合格点5教科とも100点満点で70点以上

※各科目単位制をとっており、1度合格点をとれば、次回以降受験する必要はありません。
※レポートは試験当日ではなく、受験申請書受付期間中に提出します。得点性ではなく、精査された上、合否を決定されます。

合格率5~10%

専門鑑定人

各級鑑定人試験に合格した上、損保協会宛に各級鑑定人登録申請を行えば、各級専門鑑定人の登録ができます。

専門鑑定人にはAとBがあります。

■専門鑑定人Aに登録できる公的資格
・建築積算士 ・一級建築士 ・1級土木施工管理技士 ・1級建築施工管理技士・1級管工事施工管理技士 ・第一種電気主任技術者・公認会計士 ・税理士 ・不動産鑑定士 ・技術士 ・建築設備士

■専門鑑定人Bに登録できる公的資格
・二級建築士 ・2級土木施工管理技士 ・2級管工事施工管理技士・特級ボイラー技士 ・一級ボイラー技士・第二種電気主任技術者 ・2級建築施工管理技士

※一度登録しても、級が上がると、専門鑑定人も登録し直さなければなりません

詳細は、損保協会HPをご参照ください

試験勉強の実際

認定試験学習用の「損害保険登録鑑定人用テキスト」および「補助教材」は、東京都第一教科書供給(株)に、直接購入を申し込みます。

教材の購入申し込み書は損保協会HPにてDLできます。

テキスト・補助教材の量は膨大で、全て購入すると、代金は各級37,000~47,000円ほどになります。

テキストを隅から隅まで読み込むより、過去問題を勉強し、各試験科目の出題傾向を理解してから、過去に出題された箇所を中心にテキストを精読したほうが効率的でしょう。

過去問題は、損保協会HPより無料DLできます。

就職先

損害鑑定人の就職先は、ずばり、鑑定事務所です。

しかし、1日中事務所で過ごすということはほとんどなく、毎日のように、保険会社から依頼のあった現場へ調査に赴きます。

・事務所から事故・災害現場に通う
・事務所に所属しながら保険会社に出社しそこから現場へ向かう
・事務所に所属しながら広域災害対策本部に常駐する

労働形態は、主にこの3パターンでしょう。

就職活動の際、なんらかのツテがない場合は日本損害保険鑑定人協会HP に会員会社一覧がありますので、各社HPの採用情報をこまめにチェックすると良いでしょう。

中途採用の場合、多くは、損害保険登録鑑定人か建築士などの有資格者の募集になります。

大規模の鑑定事務所は、無資格の新卒に対し3級から1級まで取得するためのバックアップを行ってますが、小規模の事務所では即戦力を求められます。

給与は基本給に仕事をした分の業績給がプラスされるところが多く、年収400~700万、中には事務所に所属しながら1000万以上の鑑定人もいますが、高収入を狙うなら、独立を目指したほうがいいでしょう。

鑑定作業は基本的に1人で行うものなので、チームワークより単独行動を好む人に向いていますし、自分が稼いでいる数字と給与の差が見えやすいので、稼げる人は独立志向に傾くのも自然です。

ノルマは基本的にありませんが、残業はあり、その量は月によってまちまちです。

大規模災害が起きたときはたいへん忙しくなります。

こんな人が向いている

・コミュニケーション能力が高い
保険会社の担当者、損害を受けた契約者、契約者の近所の方々、修理業者など多くの方々から正確な情報を得、説明し、納得してもらわなければなりません。

苦情を言われたり理不尽な態度をとられても、常に冷静に対応することが求められます。

そのため、コミュニケーション能力・交渉力・常に前向きな明るさ・バイタリティが必要となります。

・体力に自信がある
外での作業が多い仕事です。被災地によっては「徒歩」しか移動手段がないこともあるし、高層マンションの損害調査では停電のためエレベーターが使えないこともあります。

工場やプラントの評価鑑定では、広大な敷地を一日中歩き回ることもあるのです。

ただし、重い荷物を持つようなことはないので、女性にできない仕事ではありませんし、近年女性の進出が目立っています。

・知的好奇心旺盛
業務に必要な知識や技術は膨大にありますので、学習量はハンパではありません。

また、知識や技術はどんどん更新されるので、常に学び続けなければなりません。

座学に加え、調査現場は多岐にわたりますので、いろいろな場所に行っていろいろな経験を積むことになります。

知的好奇心旺盛な人に向いている職種と言えるでしょう。

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