日本伝統の建物を創り出す木造建築士

木造建築士が行う業務と資格取得者の特殊性について、説明いたします。

木造建築士について

その名の通り木造の物件に対して設計をしたり、工事の監理(監督管理)等を行います。

1級建築士や2級建築士から比べると設計出来る範囲は狭まりますが、木造建築物の専門家という点で注目されています。

携われる建物の用途や面積、高さなどに手掛けられる制限があり

・2階建てまでの延べ面積300平方メートル(㎡)以下
・延べ100㎡超である場合は木造建築士の資格が必要

(1平方㎡=1m×1m=100センチ×100センチ)
(一般的な住宅は130~140㎡、約39~42坪前後の建築物です)

上記のようになります。

住宅以外でも、店舗、公共施設、商業施設等様々です。

昭和25年に改正された建築法に基づき、昭和59年から木造建築士資格が創立されました。

国家資格習取得が必要で、国が行う木造建築士試験に合格してから都道府県知事の免許を受け取り、設計や工事監理等の業務を行います。(参考:建築士法|国土交通省

ちなみに「建築士の日」もあり、昭和25年7月1日に「建築士法」が施行された事を記念として昭和62年~「7月1日」となっております。

建築士の仕事内容

1級建築士、2級建築士、木造建築士と手がけられる建物の規模に違いはありますが、すべき事は同じです。

・建築物の間取り、構造、設備などを計画して図面を作成。
・工事の監理(監督管理)を行う。

この資格が生まれた理由

建築士制度は、1級建築士 → 2級建築士 → 木造建築士、と設計出来る範囲が狭まっていきます。

実は木造で100㎡以下なら、無資格でも法的には設計できてしまいます。

定められた範囲を超えてくると木造建築士か、それ以上の資格でなければ仕事は行えません。

資格がないと仕事の受注や工務店の経営にも影響が出ます。

1級建築士,2級建築士でなくとも、小規模の木造建築物の設計や、工事監理を行うことが出来る様にする為に、この資格が生まれたようです。

今まで資格の必用でなかった大工さんが、昭和25年に資格制度が出来たために思うように仕事が出来なくなってしまいました。

1級、2級の資格習得は難しく、救済的な面も含めて木造建築士資格を作りました。

壁や木材などの天然素材を求める需要も増えており、特殊性をもった木造建築士が求められているのも事実です。

勿論資格としてもっていれば有利な事は間違いありません。

以上の理由などからこの資格が確立されました。

資格の特殊性

建築士には上位より、1級建築士 → 2級建築士 → 木造建築士、とあります。

・1級建築士は全ての建築物設計監理が可能
・2級建築士は1級に比べ規模が限定されている
・木造建築士は2級に比べ規模が限定されている

といったように2級建築士をもっていれば、資格としては木造建築士で可能な範囲は全て行えます。

しかし、ここで木造建築士ならではの特殊性があります。

2級建築士は資格として、木造建築士で可能な範囲は全て行えます。

しかし木造建築士の試験では、2級建築士では求められないレベルでの構造的な記載、内容や計算伝統木材での必要な知識が求められます。

伝統木材の経験がないと解らない言葉等専門性は、かなり高いのです。

日本における伝統的な建造物は、木造であり歴史的建造物等専門に木造を行える技術者が必要不可欠です。

奈良や京都等の世界的に有名なお寺も木造です。

現在のコンクリートや鉄筋等の技術知識では対応が困難です。

このような建造物の維持においても必要な資格と言えます。

まあ、一般住宅やオフィスなどでも、無垢の板、漆喰いの壁、天然の木材を使った生活を目指すニーズが増えており大手の建設会社でも木造の魅力を認識しております。

今後木造建築の専門家という点からも一般住宅からお寺まで関わる事が出来、木造建築士のニーズが高まると言われております。

受験資格、試験内容、合格率

木造建築士と2級建築士の受験資格は同じであり、建築士法に基づいて都道府県知事により行われます。

受験資格

建築士法第15条建築に関する学歴又は資格等建築実務の経験年数
第1号大学、短大、又は高等専門学校において指定科目を収め卒業した者0年
第2号高等学校又は中等教育学校において指定科目を収め卒業した者卒業後3年以上
第3号建築設備士0年
その他都道府県知事が得に認める物所定の年数以上
第4号建築に関する学歴なし7年以上

建築設備士とは、建築士の要望に対して建築設備の設計、工事監理に関するアドバイスを行う事の出来る国家資格です。

実務経験不要で、2級建築士、木造建築士試験の受験資格があります。

さらに、建築設備士の資格取得者は4年の実務経験があれば、1級建築士試験の受験資格が与えられます。

このように様々な道から、木造建築士を目指す事は出来ます。

実務経験しかなくとも大工さんや工務店等での経験を7年以上積めば受験資格はあります。伝統木造の門を叩けばさらなる木造の知識も増えるでしょう。

早いうちに資格を持つことは、とても有利ですが経験を積みながら学びながらのスタイルもありです。

試験資格、試験日、試験場所等

詳しい内容は、公益財団法人 建築技術教育普及センターを参考にして下さい。

・試験内容は(二級建築士・木造建築士)「学科の試験」と「設計製図の試験」の2部構成です。

■学科試験
1、建築計画
2、建築法規
3、建築構造
4、建築施工

■設計製図
合格者のみが設計製図の試験を受けることができます。

木造建築士試験内容・合格率

学科は2級建築士と重複している面が多いですが内容的には優しいです。

特徴的な違いとして、構造や施工などで木造独特の言葉や内容などが出題されます。

木造建築士の試験はプランニングはせず単線間取り図面等となります。

それを読み解き2級よりも構造的なことを中心に作図していきます。

(2級の実技試験はプランニングからやり、1級よりも構造が小規模木造であるだけで1級と同じように:プランニングからの製図を行います)

■プランニング課題
主に住宅中心の課題となり三世代家族、仲間との繋がり、趣味等に対しての設計条件が多く出題されます。

課題の内容をしっかりと理解し機能性や温かみ等も考慮、想像しながら作成する必要があります。

3種類の建築士の中では、試験の内容も木造建築物の知識を深く掘り下げるものとなっており、これらの部分が大きな違いとなります。

■学科
・100満点中(100問)大体60点以上の正答が必要となります。
・学科試験合格率:約60%

■設計製図
・木造建築士として備えるべき「建築物の設計に必要な基本的かつ総括的な知識及び技能」を有することを認められたもの
・実技試験合格率:約60%

全体の合格率は35%~40%前後となっております

就職先・収入

主な就職先は、建設会社、建築事務所、工務店、大工、プレハブ住宅会社等の順で多くなっております。

現在の登録人数は下記となっており、

■1級建築士:360,003人
■2級建築士:752,251人
■木造建築士: 17,534人

(平成27年9月30日現在)

上記からみても木造建築士は少ないです。

扱える範囲が決まっているので大きな木造建築物を設計するとなると、1級や2級資格が必要になってしまう事からもこの現状があると言えます。

収入は下記を参考にしてください。

■1級建築士
年収500万円~800万円位、平均640万円位。

1級であっても、年収が300万円程の方もおりますし、実力などによっては年収1千万以上もあります。

■2級建築士、木造建築士
年収250万円~500万円位。

木造建築士であっても1級建築士より、多く収入を得ている方もおります。事務所の規模や経験、実力の違い信頼等、色々な要素があります。

はっきりと収入を提示する事は、なかなか難しい資格でもあります。

やりがい・苦労・適正

依頼者と相談をし、徐々に図面が形になってゆきます。頭にあったデザインが目に見えて匂いを感じ、手に触れられるそんな形となってゆく楽しみがあります。

建物が完成した時の喜びや感動は素晴らしいもので、何度家を設計しても毎回この感動があると言います。

さらに木造独自の知識、技術でお役に立てれば喜びもひとしおです。

手掛けた家に人が住み、ペットが住み何十年と様々なドラマが展開されます。

家族にとって、人にとって家とは一生に一度の大きな買い物、希望、夢かもしれません。

そこに関わる使命の大きさや喜びそして感謝された時のエネルギーそのやりがいはとても大きな事です。

思い通りに進んでいる時だけではなく依頼者の要望になかなか応えられず何度も何度も図面を作成する事もあります。

アイデアが浮かばない時などは、睡眠時間を削ってでも作業を行います。

数字を拾い出してお金の計算ばかり等、肉体、精神的にもタフな事が要求される場合もあります。

・意思が強い、計画的である
・正確に最後までやり遂げる
・イメージを相手に上手に伝えることが得意
・発想の転換や想像力が豊富等

上記に当てはまれば適正があると言われておりますが、やはり一番大切な事は「この仕事が好き!!設計して家が建ち、喜んで貰える」という気持ちが重要です。

これは全ての建築士に言える事でもあります。

2級建築士取得に必要な受験資格とは?
そして建築士とは「建築物の間取り、構造、設備などを計画して図面を作成し、工事の監理(監督管理)を行う資格」です。その入口となる、2級建築士の受験資格を得るには経験・学歴など、人によって取得への道のりが異なります。自分の現在地を知り、一歩を踏み出しましょう。

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