「賃貸不動産経営管理士」のメリット

不動産系の資格は、

・国家資格(宅地建物取引士・不動産鑑定士・マンション管理士など)
・民間資格(不動産カウンセラー・ビル経営管理士・公認 不動産コンサルティングマスターなど)ともにたくさんありますが、今、一番注目を集めているのは「賃貸不動産経営管理士」ではないでしょうか。

賃貸不動産経営管理士とは、主に賃貸アパートやマンションなど賃貸住宅の管理に関する知識・技能・倫理観を持った専門家です。

賃貸住宅は、人々にとって重要な住居形態であり、その建物を適正に維持・管理することは人々の安心できる生活環境に直結します。

そのため、継続的かつ安定的で良質な管理サービスに対する社会的な期待や要望は多く、賃貸不動産の管理業務にかかわる幅広い知識を有する賃貸不動産経営管理士の活躍が期待されています。

【引用元:一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会HP

注目を集めている理由は「もうすぐ国家資格になりそうだから」。

賃貸不動産経営管理士プロモーションビデオの中でも、国土交通省の職員が、

「(賃貸住宅管理業者)登録制度の中でも賃貸不動産経営管理士の役割は非常に大きく期待されている」
「賃貸不動産経営管理士の国家資格化の要望があることは十分承知している」
「平成27年度それに向けた検討をさらに深めていきたい」

と発言しています。

賃貸住宅管理業者登録制度とは、国土交通省が定めた「賃貸住宅管理業務処理準則」を遵守する義務を負った事業者が登録する制度。

「賃貸住宅管理業務処理準則」には、管理業者による借主や貸主への説明の義務、ウソや誇大広告の禁止、契約書の交付のルールなどが定められています。

登録は任意ですが、国交省が「不正行為があった」と判断した場合には削除されます。

登録業者は公表されますので、物件を借りたい人は管理業者や物件選択の判断材料として活用することができるでしょう。

借主・貸主・管理業者間のトラブルの未然防止も期待されています。

では、なぜ、多くの人には聞きなれない「賃貸不動産経営管理士」という資格がこの制度の中でそれほど期待されているのか、誰にどんなメリットをもたらす職業なのか、簡単にまとめてみました。

賃貸不動産経営管理士のもたらすメリット

現在の日本の賃貸不動産市場には、次のような現状(課題)があります。

  • 賃貸住宅の割合が住宅全体の4割程度を占め、国民の重要な住宅ストックとなっています。
  • 人口減少や住宅の供給過多などにより、空き家の増加が問題となっています。
  • 賃貸不動産管理業を中心とする法規制が存在せず、敷金の返還等のトラブルが高い傾向にあります。
  • 賃貸住宅の管理におけるクレームの複雑化や、管理委託契約のない管理の実態もあり、

適正な管理が行き届いていない場合があります。

(引用元:一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会HP)

例えば、退去時の原状回復、敷金・礼金、家賃滞納などに関するトラブルが多発しているようです。

これらの課題を解決し、さらに新たなビジネスチャンスを生み出すために、賃貸不動産経営管理士が必要だということです。

では、賃貸不動産経営管理士は、具体的に、誰にどのようなメリットをもたらすことが期待されているのでしょうか。

オーナーのメリット

〈自分が賃貸不動産経営管理士になった場合〉

  • 賃貸経営に必要な知識を得て、管理を委託した業者の言いなりにならずにすむ

法律に無知なオーナ-が、業者のいいなりになり、不当な扱いを受けることは少なくありません。

国土交通省の作成した「賃貸不動産管理を巡るトラブル等の現状(pdf)」には次のような事例が報告されています。

・敷金・礼金・前払家賃を業者に着服された
・業者が無断でリフォームを繰り返し料金をオーナーに請求してくる
・行ってもいないと思われるリフォームをしたと言ってリフォーム代相当を家賃から差し引かれた
・空室にオーナーに無断で入居させて家賃・敷金・礼金等を着服された

  • 自主管理能力が上がり、業者に管理委託する必要がなくなる可能性がある。

管理委託料・広告料の高さに不満を持ち、小規模のアパートなら自主管理に移行したいと考えるオーナーは少なくありません。

  • 空き家や空き地などの活用法を考えることができる。

相続した不動産、入居者がいなくなった物件などを魅力的にリノベーションしたり、新たな物件に投資したりして、ビジネスチャンスをつかめるかもしれません。

<管理を委託した業者に不動産経営管理士がいた場合>
適正なアドバイスを得て、不動産から得られる収入の維持・増加が期待できる。

不動産業者のメリット

〈自分が賃貸不動産経営管理士になった場合〉

  • 業務の拡大

仲介専門だった小規模の不動産会社が、賃貸不動産経営管理士をおくことにより、管理業務に携わって安定した管理委託料を得られようになります。

また、自主管理のオーナーに適切な助言を行うことで、コンサルタント料を得ることもできるでしょう。

  • 管理業務の円滑化

問題が起きるとその都度対応策を考えていたのが、豊富で体系的な知識により、瞬時に適切な判断ができるようになります。

  • オーナーや入居者の信頼獲得

豊富な専門知識と高い倫理観で、オーナー・入居者双方に公平で納得のいく対応をして、信頼を得ることができます。

  • 他の不動産業者との差別化

オーナーや入居者へきめ細かいアドバイスができるようになり、他の不動産業者との差別化を図ることができます。

入居者のメリット

〈物件のオーナーまたは管理業者が賃貸不動産経営管理士だった場合〉

  • 賃貸契約上のトラブルを未然に防いでもらえる可能性が高まる。
  • 賃貸契約上の疑問にわかりやすく答えてもらえる。
  • 良質な物件を借りられる可能性が高まる。

誰のための資格なのか

賃貸不動産経営管理士のもたらすメリットについて調べていて、次のような点が気になりました。

・主に家主と管理業者が資格を取得した場合のメリットが散々強調されているものの、入居者にもたらされるメリットについての言及があまりない。

2007年の認定開始から9年経過しているが、入居者側からの評判が聞こえてこない。

・国家資格昇格を目指しているとはいえ、独占業務はなく、今のところ、特にこの資格がなくても不動産管理業に支障がない。

・宅地建物取引士より試験合格が容易ということも人気の理由のようだが、宅地建物取引士か不動産業に2年以上従事していた者しか登録できない資格なので、素人のオーナーが簡単に登録できるわけではない。

そうなると、

・入居者にも利益をもたらす職業なのか?
・結局、資格ビジネスなのか?

という疑問もわいてきます。

賃貸不動産経営管理士は前書きでも言及した「賃貸住宅管理業者登録制度」における活躍を期待して、国家資格昇格を目指しているはずです。

そしてこの制度は、貸す人と借りる人を結ぶ賃貸住宅管理業の登録制度です。

【引用元:一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会HP

それならば、もっと、「借りる人」にもたらすメリットを強調することが、「賃貸不動産管理士」の必要性を周知させ、社会的地位を上げるために、有効なのではないでしょうか。

「借りる人」が「賃貸不動産管理士(のいる店)から物件を借りたい」と思うことが、この資格の価値を引き上げることになるのだと思います。

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